液晶タブレット(Cintiq 13HD)乗り換えで感じたこと。

先日、液晶タブレットを購入しました。ペンタブレットから液晶タブレットへの移行となりました。突如、購入意欲が湧いて購入したこともあって事前の情報収集が少なく、「まあ、液晶タブレットは、ペンタブレットに液晶がついただけじゃないの」的な単純な考えで購入しました。

しかし、予想以上に違いは大きく戸惑いもまた大きかったので、ここにメモを残すこととします。

 

前置き

このメモは、液晶タブレットについて、不自由に感じた点、困惑した点「のみ」を記述しています。
ペンタブレットから液晶タブレットに切り替えたことは、投資金額の大きさはともかくとして、絵を描くハードルを下げ、僕にとってはとても良い出費だったと思っています。液晶タブレットは良い、ただ、こういうことに留意する必要があるよ、ということです。

 

パソコン環境

液晶タブレット導入前は 23インチのシングルモニタのパソコン環境でペンタブレットを使用していました。

そこに液晶タブレットを接続し、ペンタブレットは引退。

液晶タブレットは通常、電源をオフにし、必要なときに電源をオンしてキーボードの前(奥から見て、モニタ→キーボード→液晶タブレット)で使用しています。

 

困惑したこと(単純なこと編)

手が視界を遮る。

ペンタブレットは手元に入力デバイスがあり、その絵描きの結果はモニタに映し出されます。手元とモニタとは別です。これに対して液晶タブレットは、液晶タブレットの画面にペンを走らせます。この結果、手とペンによって画面の一部が覆われます。右利きの方はペン位置から右側の領域のある程度の範囲が、左利きの方はペン位置から左側のある程度の範囲が、それぞれ死角になり、モニタの映像が見えなくなります。

タッチ面の違い。

液晶タブレットは、部品の構成上、液晶表示部分の上に透明な板が被せられています。Cintiq 13HDの場合、液晶表示部分と透明な板の表面には5mmくらいの厚みがあります。この結果、液晶タブレットにペンをタッチするとき、見た目の位置(液晶表示部分)よりも手前(透明な板の表面)でペンが画面に当たることになります。初めのうちは、少し違和感を覚えました。

また、この厚みにより、液晶タブレットを正面から見ない限り、ペンのタッチ位置には誤差が生まれます。ずっと昔、理科の授業でメスシリンダーや温度計の値を読み取る時に、目線をまず水平にしないと誤差が生じるというアレです。液晶タブレットは大きな平面なので、常に視差が生じます。そのため、思った位置に正確にタッチするのは、ペンタブレットよりも難しいです。

 

指には反応しないこと。

液晶タブレットは指には反応しません。これは当たり前のことで分かっていたことでもあるのですが、いざペンタブレットで絵を描いていると、つい、指で2点をタッチすればズームができるんじゃないかと思うことがあります。

スマートフォンタブレットが普及したからこそ、こういうことを思うのだから、時代は液晶タブレット登場のときから変わったものだと思います。ペンタブレットと違い、液晶タブレットは画面が見えるものだから…ね。一瞬、思う時があります。

 

困惑した点(ハードウェアとOS編)。

入出力端子。

ペンタブレットの場合は、ただの入力デバイスということで USBで接続しておしまいでした。液晶タブレットは、入力デバイスであると同時に出力デバイス(モニタ)でもあるので、USBとHDMI、それからモニタ用電源の 3つの端子があります。僕の環境では、HDMIをDVIに変換し、そのDVIを USBディスプレイモニタに接続、USB端子をパソコンに接続しています。配線はあまり綺麗ではないなあと思います。

 

左利きの画面反転。

ペンタブレットは、左利きの人も右利きの人にも扱えるような構造となっていました(Intuos2の場合)。ところが、Cintiq 13HDは、ハードウェアのボタン配列が通常利用時には左側に配置されており、ペンを右手で持つには扱いやすい構造となっています。

左利きの人は、液晶タブレットを反転させて使う必要がありますが、「液晶モニタ」の出力を 180度回転させる必要があります。これは、wacomのドライバの設定ではない(wacomのドライバはあくまでも入力デバイスとしての設定のみを行う)、かつ、windowsの設定でもなく、ビデオカードの設定になります。

したがって、ビデオカードによって設定の仕方はまちまちで、かつ、ビデオカードに設定がなければ「詰み」ということになります。僕の場合は、USBディスプレイアダプタにより接続していたこともあり、ビデオカードが実質 2枚での運用となっていることもあって、かなり困惑しました。もちろん、一度設定してしまえば解決です。

 

WindowsのTablePCモード。

Windows7以降の場合、TabletPC対応となっています。ペンタブレットの場合、ただの入力デバイスとして扱われますが、液晶タブレットの場合は、パソコンが「タブレット PCになった」と判断されます。

この結果として、画面タッチに対して windowsが関与するようになって、絵描きをする際の操作性が損なわれます。詳細については以下を参照ください。今は、Tablet PCサービスを「無効」にすることで、問題を解決することができました。

http://answers.microsoft.com/ja-jp/windows/forum/windows_7-desktop/%E7%94%BB%E9%9D%A2%E3%82%92%E3%82%AF%E3%83%AA/eb15cba3-349b-4902-93f0-b8a706ca335b

 

困惑した点(マルチモニタ編)。

マウスが必要な場合がある。

シングルモニタでペンタブレットを使用する場合、マウスの可動領域はモニタ画面の全体で、かつ、ペンタブレットの可動領域もまたモニタ画面の全体である場合がほとんどです。したがって、ちょっとメールを見たいときにタスクバーのメーラーを起動したり、後ろのウインドウをちょんと前に移動させるくらいはペンを握ったままでもできます。

一方、液晶タブレットを導入すると、結果的にマルチモニタになる場合がほとんどです。そして、この場合、マウスの可動領域は両方の画面のすべての範囲になるのに対して、ペンは、液晶タブレットの画面内しかポイントすることができません。

結果、メインモニタ側にあるだろうタスクバーのアプリケーションを起動する場合や、メインモニタ側でちょっと何かファイルを開いたり、ウインドウの位置を移動させたりする場合に、ペンでは手も足も出ない。ペンを置き、マウスを握り、そして操作する必要があります。

なお、windows8でタッチパネル採用を採用したノートパソコンの場合には、この不自由はかなり低減されるかなあと思います。

 

上下モニタとステータスバー。

一般的にマルチモニタは、モニタを左右に配置する場合が多いと思います。しかし、液晶タブレットを使用する場合、モニタは上下に配置する形になり、windowsのモニタ配置設定も恐らく上下すると思います。

この場合において、かつ、タスクバーをメインモニタの下にしている場合、少し操作系が変わってきます。

シングルモニタの場合、タスクバーは画面の一番下であり、windowsボタンは画面の左下でありました。マウスをラフに操作して画面の下や左下に移動させれば、そこが画面の端なのでマウスカーソルは止まります。ところが、上下マルチモニタの場合、マウスカーソルは画面を跨いで液晶タブレット側のほうに走り抜けてしまいます。これは、液晶タブレットの電源をオフにしている場合でも同じです。

(windowsのモニタ設定で都度「無効」にするのもまた面倒)

電源をオフにすることによる問題。

ただのマルチモニタなら問題ないのです。しかし、液晶タブレットは、常に電源をオンにする運用することは少なく、「普段はシングルモニタで時にマルチモニタになる」というような使い方が多いと思います。

お絵描きソフトは、液晶タブレット側のモニタでウインドウ最大化して使う場合が多いと思います。液晶タブレットをオフにして、見かけシングルモニタにしても、お絵描きソフトを起動すると、なお、液晶タブレット側の画面を占有して起動します。

例えば、「以前、描いた絵を png形式で保存し直したい」というような場合、ペンを握る必要はまったくないにも関わらず、液晶タブレットの電源をオンにするか、あるいは、タスクバーからウインドウをメインモニタ側に(カーソルキーなどで)移動させてくる必要があります。

(windowsのモニタ設定で都度「無効」にするのもまた面倒)

 

そんな感じで、「液晶タブレット = ペンタブレットにモニタがついたもの」というのは客観的には正しいのだけれど、そんな単純でもないよー、という個人的な体験談でした。

繰り返しになりますが、僕としては絵描きのハードルが下がったという意味において、液晶タブレットそのものには満足しています。

 

2014/08/06 追記。

当時、「Surface Proシリーズ」を選択しなかった理由は以下の通り。

  1. Surface Pro 2が品薄で、購入できるショップが限られた。
  2. 上記の在庫の少なさから、次機種投入が間近と思われた。
  3. 消費税増税前にモノを購入したかった(購入は 2014/2)。
  4. Cintiq 13HDは Surface Pro 2より安かった。

また、僕はデスクトップパソコンをメインに使っています。そして、そのまま Surface Proシリーズを購入し、お絵描きに使用すると、(フリーではない)お絵描きソフトのライセンスで困惑すると思いました。両パソコンで使用するなら 1ライセンス追加購入が必要になるし、1ライセンスで済ませるなら住み分けが必要です。

かつてのネットブックのように、メイン機とサブ機(ネット専用機)と明確に住み分ければ問題ないけれど、今回のように 2台ともがメイン機になるというのが不安でした。その点、Cintiq 13HDは、購入しても OSは 1つ、ライセンスも 1つということで何も気にするところはありません。お気楽です。

 

一方、もし、ノートパソコンをメインに使っていて、買い替え検討中ならば、Surface Proに買い換えるのも有力に思います。「Surface Pro 3 + 23インチ液晶モニタ」の金額と、「手頃な価格帯のノート PC + Cintiq 13HD」の金額とは、そんな変わらないような気がします。この場合、外出時にもお絵描きできる Surface Pro 3が、機能的に優位になるように思います。

 

このあたりが Surface Pro 3との住み分けになるのかなと、思いました。

 

Wacom 液晶ペンタブレット 13.3フルHD液晶 Cintiq 13HD DTK-1300/K0

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